近年、さまざまな業界でデジタル・トランスフォーメーション(DX)への取り組みが広がっています。医療業界でもDX化に取り組む機関が増えていますが、調剤薬局においても他人事ではありません。将来の経営を見据えるなら、積極的に取り組むべきでしょう。ここでは、調剤薬局のDX化について詳しく解説します。
DXとは、Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略語で、デジタル技術を用いた自動化や変革のことをいいます。日本では近年提唱され始めた概念で、多数の業界がDX化に取り組んでいます。
似たような概念にIT化があります。しかし、IT化は業務のデジタル化やペーパーレス化を指すのに対し、DXは既存業務自体の大幅な見直しや刷新、変革を目的としたものです。IT機器はもちろん、ビッグデータやAIなども活用し、業務フローそのものを変えてしまう場合もあります。そのため、DXは単なる業務のIT化ではなく、より広い意味合いを持っているのが特徴です。
日本ではDX化の重要性が叫ばれていますが、すでに既存システムが各事業・部門ごとに構築されているという問題を抱えています。こうした課題を解決するには、部門の見直しや再編、場合によっては経営改革に踏み込む必要があるでしょう。
一方、DX化が実現できなかった場合、2025年に年間12兆円の経済的な損失が生じると考えられています。2025年の壁と呼ばれている問題で、2018年時点と比べて3倍に膨れ上がるとされています。
こうした課題を解決するには、DX化をスピーディに進める必要があります。調剤薬局においても、DX化は進めたほうがよいでしょう。
調剤薬局は、診療報酬や薬価改定リスクや薬剤師不足などの課題を抱えています。DX化は、こうした課題の解決に寄与する可能性があります。
日本は少子高齢化に伴う医療費の拡大が問題になっており、今後診療報酬や薬価の引き下げが続くことが予想されます。純粋な売上減少といえるため、人件費などのコストカットの徹底が求められるでしょう。
また、薬剤師の人数は増加傾向にあるものの、ドラッグストアなどの店舗増加に対応できず、人手不足の状況が続いています。調剤薬局でも薬剤師の獲得が難しい状態のため、DX化による業務の効率化や省力化は必要不可欠といえるでしょう。
調剤薬局に求められるサービスも多様化しています。少子高齢化に伴い、調剤薬局は「かかりつけ薬局」としての機能・役割が求められています。医療機関との連携はもちろん、服薬情報の管理や在宅訪問など、従来以上に多様なサービスへの対応が必要とされています。より対人を意識した業務への転換が必須ですが、それには対物業務の省力化や自動化が欠かせません。
上記のような問題を抱える調剤薬局ですが、DX化によって環境を変えることも不可能ではありません。しかし、DX化を進めるにあたっては、薬剤師にもITリテラシーが求められる可能性があります。スタッフのIT研修や教育だけでなく、薬局全体でリテラシーを高める環境づくりが必要です。
また、患者さん以外とのコミュニケーションも求められます。薬剤師の役割は多様化しており、医師や看護師との連携や、患者家族とのやり取りなど、これまでと違ったコミュニケーション機会が増えると考えられます。こうした状況に対応するには、薬剤師のコミュニケーションスキルを高める必要があります。
薬局DXの実現は、薬剤師の業務負荷の軽減につながります。従来手作業で行ってきた業務をデジタル化すれば、その業務にかかっていた時間をほかの業務にまわすことが可能です。薬剤師業務の効率化を行うためのシステムは多くあるため、薬局の課題に合ったものを選ぶようにしましょう。
患者さんの情報をデジタルデータで管理することにより、服薬状況を把握しやすくなります。過去と現在の処方内容を簡単に比較することもでき、一人ひとりに合った服薬指導を行えるでしょう。また、オンライン服薬指導も適正に行うことが可能です。薬剤の使用方法や説明を画面に映しながら、対面に近いオンライン服薬指導を実現できます。
薬局DXにより、在宅訪問における人材不足や業務負担などの課題を解決できます。在宅訪問にかかわるほかの機関と連携して情報共有できれば、より効率的な業務を行えるでしょう。
まずは解決すべき課題を明確化することが大切です。自分たちの薬局にどのような課題があり、どの課題を解決させるのかを決めましょう。
課題を明確にしたら、その課題を解決するために役立つITツールを選定します。DX人材を確保し、その人たちと協力しながら進めましょう。DX人材の確保は、自社社員だけでなくDX支援サービスを活用することも可能です。
今までアナログ管理していた各種データを収集・デジタル化し、事実と一致するか確認します。例えば物資の実際在庫数とデータ上の在庫数が一致しなかったら後々問題が生じます。一致していない情報は修正し、事実に基づく情報のみをデータ化するようにしましょう。
システムを導入したら、DXで業務プロセスの改善を目指しましょう。アナログのデータをデジタル化したり、業務プロセスをデジタル移行したりすることで、業務の効率化が期待できます。
薬局経営におけるDX化のポイントは、人間が得意なことと機械が得意なことを把握することです。DX化しても人間の方が得意なことはたくさんあります。その業務は人間が行うようにして、機械が得意なことは機械にまかせましょう。
人を巻き込むことも大切です。DXは経験したことがない未来にスタッフを引き連れていくことになります。既存の状態を維持する方が誰でも楽なので、強い意志と行動力がないとDX化は実現しません。けん引する方にも不安はあるでしょうが、強い意志を持って進めることが大切です。
また、DX化には初期投資が必要なので、投資対効果を考えた上で実行するようにしましょう。
近年、調剤薬局の形態も多様化しており、様々なタイプに分かれています。
ここではそんな薬局を以下の3タイプに分類し、それぞれにおすすめの電子薬歴をご紹介します。
便利な機能例
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