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薬歴を残すことは法律で定められた義務?

薬剤師は、薬歴を残すよう指導されます。薬歴は、患者への適切な服薬指導のために大切なものです。では、薬歴が未記載だった場合はどうなるのでしょうか。ここでは、薬歴の法的義務と未記載の場合に起こることをまとめました。

薬歴を残す法的義務

薬歴を残すのは、患者の薬学的管理が一番の目的です。正しい情報を記録しておくことで、患者が来局した際、以前の情報を元に服用状況の確認などが可能です。また、薬剤服用歴管理指導料算定のためでもあります。

では、薬歴を残すことに法的な義務があるかと言えば、実は法的義務は定められていません。

例えば、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則5条(薬剤師法28条)では、調剤録を残す義務が定められています。調剤録はあくまで調剤の記録です。服薬状況の内容は記載しないため、薬歴とは概念が異なるでしょう。

保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則第88条第22項(薬剤師法28条)では、「保険薬剤師は、調剤を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない」と定められています。確認が義務ではありますが、薬歴の記録を義務化したものではありません。

また、医薬品医療機器等法第9条の3第2項では、薬局開設者に対し、患者の情報を確認させる義務が定められています。これも確認の義務です。

薬剤師は患者への確認義務もある

薬歴を残す義務は法的に明記されていないものの、併用薬や薬剤服用歴などを確認する義務があります。患者本人に確認してもいいことですが、患者は薬の専門家ではないため、明確に答えられる人は多くはないでしょう。結果的に患者に健康被害が生じれば、薬剤師や薬局の責任を問われかねません。法的義務を果たすために、薬歴を残すことが必須と考えられます。

薬歴はいつまでに書けばよい?

薬歴をつけるタイミングに決まりはありません。薬剤師によって様々な意見があります。しかし、上記でも説明した通り、薬歴を残すのは、患者のためでもあり、薬剤師を守るためでもあります。当日中に対応するのがベストと言えるでしょう。

薬歴の保管期限は?

薬歴は、患者へ適切な薬物療法と安全性を確保するために活用するもののため、一定期間参照できる状態でなければ意味がありません。薬物療法の問題点、指導内容などを常時活用できるようにするために、厚生労働省保険局医療課長通知において、「最終の記入の日から起算して3年間保存する」ということになっています。

薬歴の未記載は処分対象

薬歴の未記載が問題となるケースについて確認していきましょう。薬歴は、薬剤服用歴管理指導料のベースになるものです。お薬手帳の活用の有無によっても薬剤服用歴管理指導料は異なります。薬歴が未記載であるにもかかわらず薬剤服用歴管理指導料を請求すれば、不正請求です。こうした理由から、薬歴の未記載は、処分対象となります。

薬歴には、医師法でのカルテのような法的根拠はありません。しかし、日本薬剤師会では、薬物療法に薬学的知見を反映させるために、患者情報の記録は必須としていて、薬歴未記載は、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)の第8条2「保険薬剤師は、調剤を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならない」という規定に対する業務を怠っていると考えられるという見解を示しています。

また、薬剤師法でも、患者に対して必要な情報の提供とともに、必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければいけないと規定されていることから、薬歴の未記載は、薬剤師法にも抵触するかもしれません。

では、薬歴の未記載が発覚した場合は、どのような処分があるのでしょうか。

保険薬局の指定が取り消されると、再指定を受けられるのは5年後です。薬歴の記載が重要なことが分かります。

「くすりの福太郎」薬歴17万件未記載で1億7千円超を自主返還

2015年5月25日、ツルハホールディングスの子会社「くすりの福太郎」において、薬歴未記載による不正請求について最終報告が発表されました。結果として、同社は、1億7102万円を自主返還しています。

2013年2月末時点において、電子薬歴システムへの未入力件数が19万8073件あったことを確認。その後8月末時点では2万963件の未入力がまだ存在していました。そして、2014年2月から2015年1月までの期間では、1ヶ月以上の遅延が18万5111件、未記載が3万9494件存在している状態。薬歴未記載があるにもかかわらずレセプト請求を実施していたことから、薬剤服用歴管理指導料の不正請求となり、自主返還することになりました。

「アポロメディカル」薬歴未記載と改ざんによる不正請求

アポロメディカルHDが運営するアイランド薬局ほくしん店が2018年6月に個別指導があった際、薬歴が未記載のまま薬歴管理料を保険請求したり、未記載の薬歴を減らしたり等の改ざんが判明。グループ全体での調査に発展しました。

アイランド薬局ほくしん店では、2013年6月~19年4月までの71カ月間で、調剤報酬請求時の薬歴未記載が1万4422件でした。また、グループ内での他の店舗の調査結果では、2014年1月~19年4月までの64カ月間のうち、請求時に未記載だったのは合計で23万115件に上りました。概算で1億138万円超を自主返還しています。

薬歴はため込むと大変!当日中に記録しよう

薬歴は、法律の条文として明記されているものではありません。しかし、薬剤師および薬局の義務として、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認し、必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければいけないという規則があることから、薬歴の記載は必須です。また、薬歴未記載で薬剤服用歴管理指導料を請求すれば、不正請求になります。業務に追われてため込んでしまうと大変です。自主返還の事態となったケースでも、薬歴を未処理のままため込んでしまい、処理が追い付かなくなった背景が想像できます。当日中に記録するよう心がけましょう。

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※参照元:厚生労働省「かかりつけ薬剤師・薬局に関する調査報告書[PDF](https://www.mhlw.go.jp/content/000509233.pdf)
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