調剤業務の際に行う薬歴記載は、記載事項が多いことから、現場の薬剤師の大きな負担となっています。ここでは、薬歴記載の合理化とはなにか、薬歴を未記載にすることのリスクなどを紹介します。
2023年11月29日に開催された中央社会保険医療協議会(中医協)総会において、薬歴記載の合理化に関する提案がありました。
薬歴記載の合理化の必要性を訴えたのは、日本薬剤師会副会長の森氏。現段階では調剤報酬の算定のために薬歴を漏れなく記載しなければならず、要件の記載が長くなってしまうことがあります。そのため森氏は「現場で働く薬剤師の負担を軽減するような合理化と見直しを行い、薬剤師や指導監査担当者の考え方を変える必要がある」と指摘しています。
薬歴の記載には、患者さんに適切な薬を提供する目的があるほか、調剤報酬を請求する目的があります。しかし、目的を理解してはいるものの、「こんなに長い薬歴を毎回書くことが、本当に有益なのだろうか」と疑問に思う薬剤師の方もいるでしょう。
服薬管理指導料における薬歴記載については、今後見直しが進むといわれています。「患者さんに適切な薬を提供する」という目的はそのままに、合理的で効率の良い働き方の実現が期待されます。
薬歴記載は薬剤師にとって重要な業務であり、未記載のままで済ませるわけにはいきません。しかし、現場の薬剤師からは「未記載のまま放置したことがある」という声も。未記載の理由は、単に面倒だからなどというものではありません。現場の声は、もっと深刻な現状を表すものでした。
薬歴を未記載のまま放置したことがあるという薬剤師のなかには、「薬歴記載の重要性は理解しているが、残業をしないと薬歴記載の時間が取れない。しかし、本部から残業を制限されている」という声も。患者さんの健康に影響するような薬歴は記載していたものの、特記事項のないような薬歴は後回しになっていたようです。
また、「調剤業務で精一杯の薬局では、薬歴をしっかりと記載するのは現実的に不可能。本部もそのことを認知しているはずであり、未記載が問題といわれても今更感がある」という声もありました。
長い薬歴を業務中に書ききることは困難であり、薬剤師に悪意がなくても未記載問題が発生してしまう状況がうかがえますね。
薬歴の未記載が問題となっていますが、なぜ未記載が問題視されてしまうのでしょうか?
薬歴の記載には「患者さんに適切な薬を提供する目的」と「調剤報酬を請求する目的」があると先述しましたが、「患者さんに適切な薬を提供する」という点においては、未記載が法的な問題となるわけではありません。
保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(薬担規則)においては、薬剤師が調剤を行う際に患者さんの服薬状況や薬剤服用歴を確認しなければなりません。しかし薬歴簿で確認することを必須としていないため、薬歴が未記載のままでも法的な違反を行ったことにはならないのです。
一方、「調剤報酬を請求する目的」においては、不当請求の可能性が生じます。調剤報酬上の薬剤服用歴管理指導料の算定には、「服薬状況などの情報を収集して薬剤服用歴に記録し、これに基づいて必要な指導を行うこと」という要件があるためです。薬歴が未記載のまま報酬を算定することは、不当請求として扱われます。
薬剤師の働き方を改善し、より安全で正確な調剤業務を行うためには、薬歴記載の合理化が重要なポイント。薬歴記載が合理化されれば、薬剤師の負担が軽減されるだけではなく、調剤ミスや指導不足といったリスクを減らせるからです。
薬歴記載の合理化への動きは今後進んでいくと考えられます。もしも現状において「紙ベースの薬歴記載が負担になっている」という場合は、電子薬歴の導入を検討してもよいでしょう。
近年、調剤薬局の形態も多様化しており、様々なタイプに分かれています。
ここではそんな薬局を以下の3タイプに分類し、それぞれにおすすめの電子薬歴をご紹介します。
便利な機能例
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