電子薬歴には多くの患者の個人情報を記録しますので、個人情報保護法を踏まえた情報管理・運用に気を付けなければいけません。薬剤師には守秘義務が課せられていることから、「個人情報取扱事業者」としてさまざまな事項への対応が必要になっています。
「個人情報取扱事業者」とは、個人情報保護法によって定められており「個人情報データベースなどを事業の用に供している者」をいいます。ここでいう個人情報とは生存する個人に関する情報をいい、氏名や生年月日などのデータによって個人を識別できる情報などを指しています。
「個人情報取扱事業者」である薬局・薬剤師は、利用目的の特定や制限・通知をはじめ個人情報の適正な取得、データ内容の正確性保護、安全管理措置、従業者・委託先の監督、第三者提供の制限、記録の作成などについて具体的なルールの作成・明確化などが必要になります。
薬局が取り扱っている個人情報としては処方箋や調剤録、薬剤服用歴の記録、医療機関からの診療情報提供文章、レセプトなど調剤に関する患者情報、介護保険のケアプラン、要指導医薬品や一般用医薬品などについての顧客データが該当します。
「要配慮個人情報」とは、本人の人権や信条・社会的身分・犯罪歴など本人に対して不当な差別・偏見その他不利益が生じないよう取り扱いに特に配慮が必要な情報であり、心身機能障害に関する情報や健康診断その他の検査結果などの情報も該当します。
令和2年、個人情報保護法が改正されました。全面施行は令和4年4月1日からです。「個人の権利利益の保護」「技術革新の成果による保護と活用の強化」「国際的な制度調査・連携」「越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応」「AI・ビッグデータ時代への対応」など5つの視点が改正により変わっています。
その中でも情報の漏洩発生時の報告義務化は最も重要です。事業者の守るべき責務の在り方について、情報漏洩が発生して個人の権利利益を害する恐れが大きい場合「委員会への報告及び本人の通知を義務化する」ことになりました。要配慮個人情報、不正アクセス、財産的被害など、一定数以上の個人情報の漏洩が当てはまります。
以前は個人の権利利益を害する恐れが大きい情報漏洩が発生した場合、個人情報保護委員会及び、本人通知するよう「務める」で終わりでした。改正後は、義務化されています。対象事案となるのは、要配慮個人情報、クレジットカード番号をはじめとした個人データなど、不正アクセスや持ち出しや盗難、1,000件を超える漏洩などです。
たとえば、患者の診療情報や調剤情報を含んだUSBメモリの紛失、従業員の健康診断などの結果を含んだ個人データなどが挙げられます。対象となる事態、報告及び通知の方法は通則ガイドラインを参照にします。データの取り扱いを委託している場合、委託元と委託先双方に報告義務があります。
また、医療機関がサイバー攻撃を受けて個人情報漏洩、医療提供体制に支障が生じるといった事案について、当該医療機関から「厚生労働省医政局研究開発振興課医療技術情報推進室」への連絡が必要です。
情報漏洩が発覚したら解決のために複数の措置が求められます。「事業者内部の報告と被害の拡大防止」「事実関係の調査と原因究明」「影響範囲の特定」「再発防止策の検討および実施」「個人情報保護委員会への報告及び本人への通知」です。また、二次被害防止、類似事案の発生防止のために公表することが望ましいとしています。
個人情報保護委員会のHPの入力フォームから報告します。個人情報委員会のHP内の、個人情報保護法等から漏えい等の対応とお役立ち資料を確認してください。漏えい等の報告についてのページの下の方にある「漏えい等報告フォーム」が入力フォームです。留意点や記載例も掲載されています。
漏洩した情報に、マイナンバーが含まれているかどうか、または行政機関・民間事業者・法人などにより、報告フォームが異なるため注意が必要です。
個人情報漏洩をしないためには普段からの認識が重要です。「正しいリスク認識」「正しい責任認識」「正しい手順を身体で覚える」という意識を普段から持つことが求められます。
たとえば正しいリスク認識だと、薬局で渡す書類についても注意が必要です。別人に渡すと配慮個人情報の漏洩に当てはまる可能性が高いと認識しましょう。業務プロセス上でミスの発生リスクの洗い出しを行うことも重要。「なぜその手順でするのか?」といった疑問について、リスク発現防止のためにしているという目的をスタッフが理解することも大切です。手順を誤ると、どんな重大なリスクがあるか認識を持つ必要があります。
正しい責任認識も重要です。個人情報保護は社会的な要請度合いが高まっています。薬局は個人情報漏洩について重い責任を持っていると、スタッフへの周知を徹底しなければなりません。
そのために正しい手順を身体で覚えてもらうことを重視します。たとえば、処方箋の患者名や薬袋、薬剤情報提供文書のすべてのページの患者名が一致しているかどうか指差し確認も必要です。患者名、お薬手帳の患者名、お薬手帳シールの患者名が一致しているか確認をしましょう。服薬指導でも、薬剤や薬剤提供文書、患者にフルネームを確認してもらうなどを身体で覚えるとよいでしょう。
参照元:個人情報保護委員会|令和2年改正個人情報保護法概要リーフレット(令和4年2月)[PDF](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/revised_APPI_leaflet2022.pdf)
参照元:日本保険薬局協会|令和2年改正個人情報保護法(令和4年4月1日全面施行)について[PDF] (https://secure.nippon-pa.org/pdf/enq_2022_04.pdf)
電子薬歴を導入するにあたっては、厚生労働省が発表している「医薬情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守する必要があります。さらに使用条件としては記録時間や記録者を明確化し上書きを防ぐ真正性、法令に定める期間の保存・バックアップを行う保存性が必要になるため、エクセルやワードといったビジネスツールを利用することが認められていません。そのため基準に則って製造されている専用のソフトを利用する必要があります。
薬局における管理者は、操作マニュアルとは別に運用管理規定を定め、従いながら運用する必要があります。運用管理規定には運用管理を総括している組織や体制、設備などに関する事項をはじめ患者のプライバシー保護に関する事項、その他運用管理を適正に行うために必要な事項を記載する必要があります。また、近年では音声入力システムにより患者との会話をその場で入力する仕組みもあり、導入検討が推奨されています。
電子薬歴は紙の薬歴に比べると紛失リスクが低く、情報の見逃しが減るため服薬指導の質を上げることもできます。保管に場所も要せず、探す時にもすぐ目的の薬歴を確認することができるため非常に効率的です。また、パスワードなどを設定することでセキュリティ面もある程度担保できるでしょう。一方で費用がかかる点、操作を覚えなければいけない点、セキュリティに注意しなければ個人情報の流出リスクがある点などがデメリットであるといえるでしょう。
あらゆる業界でDX化が進む昨今、薬剤師・薬局においてもデジタル化が求められています。「難しそう」などといったイメージで取り組まないのではなく、ぜひ一度電子薬歴の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
参照元:薬剤服用歴(薬歴)管理ガイドライン│一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会 (https://www.jacds.gr.jp/guideline_20150714new.pdf)
参照元:個人情報保護に関する薬局向けQ&A│日本薬剤師会 (https://www.hsp.ehime-u.ac.jp/medicine/wp-content/uploads/personal_information_guidanceFAQ2.pdf)
近年、調剤薬局の形態も多様化しており、様々なタイプに分かれています。
ここではそんな薬局を以下の3タイプに分類し、それぞれにおすすめの電子薬歴をご紹介します。
引用元:シグマソリューション公式HP
https://www.sigma-sol.co.jp/products/elixirs/index.html
便利な機能例
引用元:メディクス公式HP
https://medixs.jp/
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引用元:Solamichi公式HP
https://site.solamichi.com/
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